ローカルでの働き方Work style

故郷ではじめた

夢と美容

日田市

小さいころの記憶
深呼吸をすれば、水の香り
遠くを見れば、杉山の世界
耳を澄ませば、祭り囃子
水と緑と音のまち
この美しさを
次の世代へつなげる

水郷日田の全景。豊かな水源と美しい山々の風景に囲まれた盆地には江戸の情緒を残した建物も現存する。

知り合いゼロからの家族移住と起業

阿蘇・くじゅう山系や、英彦山系の標高1000m級の山々に囲まれ、一級河川の三隈川が流れるこの場所に、新しい息吹を吹き込んだのが美容室『e′motion』だ。
柄本美鈴さんは、横浜にて美容師として勤務。夫とも同じ店で知り合い、結婚後も勤務していたが、東日本大震災をきっかけに九州へと引っ越した。戻った当初は福岡で開業しようとテナント契約まで進めたが、大切な人を笑顔にしたい、という自分の想いに向き合った末、原風景である日田へのUターン移住を決意した。

夫と話し合った末にUターン移住を決意した柄本美鈴さん。起業と出産を日田で叶えた。

高校卒業と同時に上京したので知り合いは皆無。そんな自分が起業なんてできるのか。不安な面持ちで商工会議所を訪ねたが、意外にも担当者は快く背中を押してくれた。その後は担当者を介して、業者や先輩移住者ととんとん拍子に繋がっていった。その結果、約4ヶ月余りでサロンを無事に出店することができたのである。強い想いが現実となったオープン初日、誰も知らないところから始まったにも関わらず、年齢問わず、多くの地元の人たちが祝福に集まってくれた。

観光客でにぎわう日田駅。市内には美容室、カフェなど新しいお店があちらこちらに。移住して開業するひと達も増えているという。

日田はチャレンジがしやすい町

「福岡や大分からも近く、都会より初期投資が安い。若者も少ないせいか、皆が応援モードなので、行動に起こしやすいです」
その言葉通り、日田市は3年連続、県外からの移住者数1位(大分県内)となるほどの人気ぶり。商圏の広さ、開業資金の補助、空き家の数、ポジティブな市民性、自然や食の豊かさなど、地方で起業する利点が詰まっている。また現在では、先輩移住者がノウハウを教えてくれることも魅力のひとつとなっているようだ。

起業したワーキングマザーや移住者同士が繋がり、情報交換も盛んに行われている。青年部の活動を通じて同世代の仲間も増えた。

その繋がりのおかげで、サロンの開業資金も、予定よりもずっと安く抑えることができた柄本さん。また開業した後も、お客さん同士が繋がっていることが多く、ほとんど広告にお金をかけずに口コミだけで集客ができている。現状、オープン当初のチラシ程度での宣伝費に留まり、客数も安定的だという。「都心よりも地方で起業すると、必然的に注目もされやすいので、その分、広告費も削減できて、ビジネスチャンスもあるなと実際起業して感じました。それとともに、若者を応援したいという場所にいるのも良かったですね。高齢者の方もとても親切ですし、いつも励ましてくれます」

「世界一の美容師」というメッセージ入りのキーホルダー。横浜時代の後輩からのプレゼントは、いまでも毎日身につけている。

ひとの繋がりがとても深いと、移住者の誰もが感じる日田の市民性。その証拠に、困ったことがひとつあると、それに対して沢山のアドバイスが、あっという間に集まってくるそうだ。「相談した時もですが、日常の些細なことでも地元の温かさを感じます。野菜や果物をもらうことも日常茶飯事で、横浜時代よりも、ずっと食費も安くなりました。また、2012年の九州北部豪雨の時も、自分たちの身だけでなくご近所同士の安全にも気を配ったりと、どんなシーンでも助け合いの精神が備わっているまちだなと感じます」と柄本さんは語る。

丁寧なカウンセリングとフレンドリーな接客が人気。お店のファンになってほしいという思いから、お客様にはスタッフ全員で挨拶や声がけをしている。

柄本さんのサロンは、7割がリピート客の予約で埋まるほどの人気ぶり。その秘訣をうかがうと、ひと手間かけることを大切にしているそう。
「開店チラシも、わざと玄関のインターフォンを鳴らして手渡したのが、今どきめずらしいね、って声をかけてもらえました。単純なことでもアイデアを出すことでより地元のひとたちと距離が縮まった気がします」と語る。

休日は夫と愛娘とドライブで福岡や熊本に行くことも。どちらも1時間程度で、買い物や温泉を楽しみ、心身ともにリフレッシュしている。

子育てしながら新規事業にも挑戦

また現在、柄本さんは子育てと美容師の二足のわらじで活躍中。日中は保育園に子どもを預けるが、日田は待機児童もなく、土日保育の園もいくつかあるので仕事に支障はないとのこと。

同じ浸日田市内で移住者が開店したHazebo coffeは、移住した同士さまざまな話ができる。ハンドドリップのコーヒーと会話は、癒しの時間。

最近では、ワーキングママとして働きつつ、さらに日田の雇用を生み出そうと、美容師育成カリキュラムを実施。高校を卒業後、サロンで就労しながら、通信教育で美容師免許を通常より短期間で取得できる仕組み。「日田の人に感動を与え続けたい」と満面の笑みで語る柄本さん。明日の美容業界、明日の日田に繋がる未来のために、e′motionと共に今日も走り続ける。

移住した人Local Person

柄本 美鈴さん

大分県日田市出身/Uターン/美容室経営・美容師

横浜の美容室での就職を経て、横浜で知り合った夫と、東日本大震災をきっかけに福岡で生活。一時は福岡で開業を目指すが、両親が住んでいたことや地元への感謝の気持ちから日田に2015年Uターン移住。同年、「e'motion」という美容室を開業。お客様の綺麗を日々追求する。

e'motion
地域の人に愛される美容室

フランス語で感動を意味するエモシオン。オーナーの夫とともにサロンを運営。地域の若者を育てる、美容技術を学べるスクール制度も。

大分県日田市大字渡里1457

TEL:0973-28-5966

9:00-19:00 定休日:月曜日

日田の暮らしマップLocal Map

HOME
HOME
INFO