ローカルでの働き方Work style

憧れを追い求めて

港町へ

津久見市

鳥たちが舞う
海を行き交う船
ひとり、ぼんやりと
日が沈む海を眺めながら
釣り糸を垂らす
港町で暮らす特権を
見つけた彼女

『たかせao』のスタッフは代表含めて3名。先輩社員と一緒に代表の下で独立に向けて研鑽を積んでいる。

この職場で働きたくて

海と山に囲まれた、港町・津久見市に元々ガソリンスタンドであった建物を改装したオシャレな建築事務所『一級建築事務所たかせao』がある。ここでプランニングから、設計、模型作り、現場対応まであらゆる業務をこなすのが福岡さんだ。彼女が移住を決めたのは、3年前のこと。転職がきっかけだった。

建築家に欠かせない製図用の文具。住居から店舗、家具のデザインなど様々な分野のデザインを手がける。

大分の大学で建築を学んでいる時期に、『たかせao』でアルバイトとして働いた後、地元・熊本県内のハウスメーカーで勤務をするも、思い描いていた建築の仕事ができずに悩んでいた福岡さん。その頃に起きたのが、熊本地震だった。震災を機に将来のことや、暮らし方について考えるようになった福岡さんは「自分の好きな場所で働きたい」と、『たかせao』に戻ることを決意し、津久見市へ移り住むことになった。

事務所天井には、これまで設計を手がけてきた建築の模型がずらりと並ぶ。福岡さんが設計した店舗の模型も飾られている。

港町ならではのリフレッシュ

職場で働くのは、福岡さん含めて3名。九州内での住宅や店舗設計のほか、家具のデザイン、リノベーションなど幅広く手がけている。そのため、一人で設計から全てを担当することも多く、移住してからは毎日業務に追われていたと振り返る福岡さん。慣れない仕事を覚えるための勉強に加え、休日には一級建築士になるための学校に通う。息つく暇もなく仕事に取り組む彼女をみて声をかけてくれたのが、社長の高瀬さんだった。

仕事のあとは、津久見の穏やかな海辺で、一人でのんびり日が沈んでいく様を眺めながら釣りを楽しむ福岡さん。

「気分転換でもどう?と、釣り竿を買ってくださって、釣りのやり方も、捌き方も教えてくれたんです」。煮詰まっていた彼女を見かねた社長がプレゼントしてくれた、リフレッシュの道具。今まで、釣りの経験はほとんどなかったという福岡さんだが、日々の煩わしさを忘れて、釣り糸を垂らし、ぼーっと海を眺める時間は、彼女にとって贅沢な時間になった。「仕事終わりは一人で釣りに出かけて、日が落ちるまで楽しんでいます」。釣れた魚は自分で捌いて、晩ごはんのおかずに。釣りをきっかけに、港町で暮らす生活の楽しさに気づいた福岡さんだが、この街の魅力は海だけではないと話す。

職場での細かな作業に集中して取り組む姿から一転、リラックスした表情を見せてくれた福岡さん。

人の優しさが街の魅力

ほとんど知り合いがいない街へ移り住んだ福岡さんだが、事務所で働きだしてからは近所の方とも交流ができ、外出する機会も増えたという。最近では、釣り先で魚を分けてもらったり、世話焼きのおばちゃんからお祭りの情報をもらったり。人との距離に戸惑うこともあるというが、そこもまた田舎の魅力。優しさに触れ、助けてもらいながら、移住生活を満喫している。

お気に入りのスポットではアジがよく釣れる。釣りをしている見知らぬおじさんが魚をくれることも。

現在は猛勉強中だが、難関の一級建築士の試験に合格したら独立したいという思いを持っている彼女。「独立をすごく応援してくれる社長で、なんでも経験させてくれる。それがすごくやりがいになっています」。周囲のサポートを受けながら、夢に向かって努力を続ける福岡さん。彼女が手がけた建築が、津久見から日本中に増えて行く日が楽しみだ。

入社後すぐに住宅や店舗の設計などを担当。憧れの建築事務所で、充実した日々を送る。

手がけたお店が増えていく喜び

会社では、店舗・事務所の新築や改築を担当することが多いという福岡さん。入社後、初めて手がけたお弁当屋さんの『空カフェ』や、初の新築を担当した『潮風と発酵。MISOBA』、『Dining Bar 1973』など、津久見市内には福岡さんが設計したお店が、徐々に増えてきた。施主さんの要望やイメージを汲み取るのはもちろんのこと、発酵のお店を手がけた際には、商品を保つための湿気の問題や、機密性のことなども考慮しながら設計を行わなければいけないこともあり、社長にアイデアをもらいながら、細部に至るまで緻密に設計。引き渡しまで何度も現場に足を運び、修正や問題がないかを確認した。少しのミスが大きなトラブルになる建築現場。気を抜けない日々が続いたというが、無事に完成したお店が営業を続けているのをみると、ほっと一安心するのだそうだ。

気が遠くなるような細かい模型づくりも、設計業務には重要な作業。この日は家具の模型を製作中。

代表の高瀬さんが主宰する、まちづくり団体『ツクミツクリタイ』のメンバーにも加入している福岡さん。街を盛り上げている人たちの輪の中で活動することで、人脈も広がり、津久見で暮らすことの楽しさを噛み締めているようだ。インタビューの最後には「私は津久見が好きです」とまっすぐな思いを話してくれた彼女。「これからは、まだ担当したことがない鉄骨造の建物設計など、様々なことに挑戦していきたい」と意欲を燃やす福岡さんは、これからきっと津久見市のまちおこしを、建築目線で担っていく存在になるに違いない。

移住した人Local Person

福岡 里予さん

熊本県出身/Iターン/会社員

一級建築士を目指す26歳。日本文理大学で建築を学ぶ。卒業後、熊本県内のハウスメーカーに就職。熊本地震を機に、2017年津久見市へIターン、大学在学中にインターンで学んだ建築事務所に転職。店舗や住宅の設計業務とあわせて、一級建築士の試験勉強に励んでいる。

一級建築事務所 たかせao
まちづくりにも関わる建築事務所

住宅・店舗のほか家具など多様な設計を手がける。まちづくり団体を主宰し積極的に地域づくりに関わる。

大分県津久見市港町7-22

TEL:0972-82-1203

津久見の暮らしマップLocal Map

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