ローカルでの働き方Work style

地域おこし協力隊を

終えて地域へ

由布市

「ひとは必要とされてこそ、
しあわせ」
協力隊で得た気付きを活かし、
地域体験ができる場をオープン

自然豊かな由布市。由布院温泉があり、農業も盛ん。県庁所在地である大分市や別府市も近く、地の利があるエリア。

地域に密着した働き方っていいな

大分県のほぼ中央に位置し、全国有数の名湯として名高い由布院温泉のある由布市。大分市、別府市と隣接したベッドタウンである一方、由布岳などの豊かな自然にも恵まれ、アウトドアやツーリング好きにも人気のエリア。中山間地には美しい棚田が広がり、昼夜の寒暖差を利用した梨や野菜の生産も盛んで、この街に移住して農業を始める人も増えている。
米澤 須美子さんは、2019年に由布市の『地域おこし協力隊』を卒業し、同市でカフェを運営している。

「情熱で動いています」と語る米澤さん。柔らかな笑顔が印象的。ライフステージの変化に関係なく、女性が活躍できる場所が必要と感じてきたという。

大阪府で働いていた米澤さんが移住を決めたのは、ライフステージの変化がきっかけだった。「大分市で暮らす両親が高齢になり、娘も中学生に。大分へ帰るのは今だと思った。由布市は温泉があり、自然豊かで大分市も通勤圏。ここで地域に密着して働きたいと思った」と語る。それまで接客や製造等さまざまな仕事を経験し、手に職をつけようと心理セラピストの資格も取得。自分にあった働き方を模索してきた米澤さんにとって、新たなステージが始まった。

カフェの窓からは由布岳と鶴見岳をバックに美しい棚田が一望できる。棚田から吹く風が気持ちよく、時間を忘れる。

自分で仕事を作る

地域おこし協力隊の採用決定後、娘さんと一緒に由布市へ移住。熊本・大分を襲った地震の直後だったが、市の職員が地域に馴染めるように、さまざまな人を紹介してくれた。福祉、農政、商工観光など市役所内の全課をまわり、市が目指す方針やさまざまな取組みを知った。過疎化の進む庄内町での移住促進の目的を越え、活動は水路掃除や商店街の活性化、お祭りやイベントの手伝い、野草・人工林の管理団体の立ち上げサポートまで多岐にわたった。

「土地を買うことはその土地を管理できるかどうか」と米澤さん。草刈りなどは両親や地域の人たちが手伝ってくれるそう。

「地域おこし協力隊は、名刺を渡して嫌がられない職業ナンバーワン。みんな困っていることを相談してくれます。地域起こしをしている地元の方、他地域の協力隊とも交流しながら、どうやったら自分のできること・やりたいことで地域に恩返しできるかを考え、仕事を作っていきました」と当時を振り返る。

取材時、米澤さんの田んぼでは、初めて植えたという稲がすくすく育っていた。もうすぐ実りの季節を迎える。

みんなの憩いの場をオープン

2年目に入った頃、米澤さんは由布市に移住体験施設がないことに気付く。ならば自分がやろうと決意し空き家を探し始めると、地域の人が「この辺りで一番景色がいい」と教えてくれたのが、挾間町小野地区の土地。由布岳と鶴見岳を背景に、段々畑を一望できる絶景スポットで、民家、商店、田んぼ4反、森も含めて購入した。「ここは、移住者を受け入れてくれる一方、プライベートはそっとしておいてくれる。地域おこし協力隊の活動はいろんな地区をまわるので、どこが自分にマッチするか知るのにも役立った」と米澤さん。

参加型で行ったカフェの改装は地域でも話題になり、お店の周知にも繋がった。米澤さん自ら大工道具を握って奮闘した。

建物の改装は、〝古民家再生プロジェクト〟としていろんな人に手伝ってもらい、2019年、地域おこし協力隊を卒業後、『天空カフェ 寿ぐ』をオープン。「地域の方が家族三世代で来てくれたり、老人会の集まりを開いてくれたり。昔話を聞けるのが嬉しい」と米澤さんは言う。現在は、カフェと心理セラピストの資格を活かしたセラピーやイベントを行っているが、ゆくゆくは宿泊できるように設備を整え、田んぼや森も最大限活用し、日常を離れた癒しの場にしたいと考えている。「都会の人たちがここに泊まって、土地のおいしいものを食べ、土に触れることで、生き方を考え直すきっかけになれば」とヴィジョンは広がる。

味わいのあるカフェの外観。かつては近所の人が日用品を買う商店だった。「近所のみなさんが当時のことを話してくれるのが嬉しい」と米澤さん。

上手に甘えられるようになった

米澤さんは根っからのパイオニア気質。これと決めたことは自ら動いて形にしてきた。しかし、『協力隊』の活動を通して「ひとに上手に甘えられるようになった」と言う。「地域の方の多くが、知識や知恵を伝えたい、能力を活かしたいと思っている。ひとは必要とされることで幸せを感じるんだと気付いた。みなさんの力を借りて、暮らしや地域のことを子どもたちに伝えたい。地域のおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなるときに血の繋がっていない孫が泣いてくれる。そういう関係性の生まれる場所になったらいい」と語る。米澤さんにとって、移住は生き方改革でもあったようだ。

「都会の人、地域の人、子どもたち、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなが交流して、新たな循環が生まれる場所にしたい」米澤さんの夢は広がる。

地域おこし協力隊

高齢化や人口減少などの進む地方で、地域外の人に地域おこし活動を行ってもらい、その後の定住につなげる制度。任期は1年~3年。活動内容や待遇は募集している地方自治体によって異なるので、Webサイトなどを確認してみよう。


移住した人Local Person

米澤 須美子さん

大分市出身/Jターン/カフェオーナー・心理セラピスト

京都の短大を卒業後、大分市と大阪府を行き来しながら接客・製造・HP制作等に従事。2016年から3年間、由布市の地域おこし協力隊に着任。2019年、任期終了後カフェをオープン。高校生の娘と2人暮らし。

天空cafe 寿ぐ 〜ことほぐ〜
自然に抱かれた、みんなの憩いの場

絶景を眺めながらいただくランチは格別。ヨガや工芸ワークショップなどさまざまなイベントも行われている。

大分県由布市挾間町小野785

TEL:090-6425-1352

10:00-15:00 ※金曜日は夜営業あり

定休日:月-木曜日

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